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『役所のしくみ』 / 久保田章市(著)

本書は、身近にあるけれど具体的な業務内容などについてはあまり知られていない「役所(=自治体行政)」の仕組みについて、島根県浜田市の現役市長が分かりやすく解説してくれています。

この『役所のしくみ』は6部構成で、役所の実情や自治体の歴史と制度、首長と議会の関係、財源、予算について、浜田市で実際に行っている施策例、首長(市長)になりたい人に向けた内容などが書かれています。

著者について

著者の久保田章市氏は、現在市長を務める島根県浜田市生まれで、東京大学を卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、約30年勤務した2005年に退社しました。
2006年から三菱UFJ系列のシンクタンクや大学教授として勤務し、2013年に浜田市長選挙に立候補し初当選を果たしました。
その後、2017年・2021年の市長選にも当選し、3選を果たした現役市長になります。
尚、2025年の浜田市長選不出馬表明しています。

著者は銀行(産業界)、大学(学界)、市長(官界)「産・官・学」のすべてを経験したキャリアを持つ人物という事もあり、実務と理論を併せ持つ独自の視点で役所(=自治体行政)について分かりやすく解説してくれてています。

オススメポイント

個人的に特に参考になったのは下記になります。

役所の通常外業務

市役所職員の業務には通常業務だけでなく、災害対応、年末業務(ふるさと納税)、休日出勤(選挙・確定申告)、住民対応(情報公開請求)など、「お役所仕事」と呼ばれる気楽そうな業務内容と異なり、厳しさとプレッシャーを感じることが出来ました。

選挙対応にも休日出勤で対応しているそうで、「あの選挙で受付していた人達って、市役所の人だったのか・・・」と思いながら読みました。

あと、法律で認められている情報公開請求も対応が大変とのことです。
個人情報や機密情報などは黒塗りにする必要があり、塗りつぶし漏れがないかなどのチェックなどもあり、想像しただけでも大変そうです。
さらに追加で請求などされるとものすごいボリュームになり、気が遠くなります。

地方自治体の業務フローと内容

予算成立の流れはほぼ国会と同じとのことですが、国会の流れを把握していなかったので、まとめて知れて良かったです。

あと、国会が「議員内閣制」なのは知っていましたが、地方自治体の選挙制度が「二元代表制」と呼ばれているのは知りませんでした。
学生時代の教科書に載っていた記憶がないな・・・?
真面目に勉強していなかっただけ・・・?

他にも「政令指定都市」「中核都市」「特例市」の意味や「市三役」の内訳、「陳情」と「請願の違いや「政策」と「施策」の違いなど、聞いたことはあるけど具体的にはどんなものか知らないものが多くあって参考になりました。
また一番意外だったのは、市長が「勤務時間の制限なし」「守秘義務なし」「兼業OK」だったことです。
それで良いのか・・・?

地方自治体の歴史

日本史の授業で「版籍奉還」や「廃藩置県」が行われたことは知っていましたが、「版籍奉還」が行われる前の明治元年には「府藩県三治制」と呼ばれる制度があったのは知りませんでした。(教科書が変わった?)

「府藩県三治制」は旧幕府の直轄領を「府」、大名の領地を「藩」、それ以外の土地を「県」に分けて統治した制度のことだそうです。

また、「版籍奉還」が行われた時に藩主が「知藩事」(「知事」ではなく)と呼ばれる様になったことも知りませんでした、

市町村合併とその弊害

「明治の大合併」、「昭和の大合併」、「平成の大合併」と、これまで3回の大きな市町村合併を経て今の市町村制度があるとのことです。

「平成の大合併」は記憶にありますが、ほかの2つは日本史でも習った記憶はありません(覚えれないだけかもしれませんが・・・)。

この「平成の大合併」が今、大きな問題になっています。
合併から約20年が経過し当初の目的であった「行政の効率化」や「財政基盤の強化」は一定の成果を上げた一方で、人口減少と高齢化が進む中で想定した規模の経済効果が得られず、財政難に直面する自治体も少なくないのが現状とのことです。

特に「合併特例債」が大きな影を落としています。

「合併特例債」は「平成の大合併」を促進するために国が設けた特別な地方債で、2006年までに合併した市町村のみ発行が許されたため、2005年に駆け込み合併する市町村が多数発生しました。

この「合併特例債」は発行額の70%が地方交付税で補填されるという財政面での優遇措置があったため、多くの自治体が先を争って大量発行しました。
この地方債により多くの自治体はインフラ整備や庁舎建設などを積極的に進めましたが、その反面「使われないハコモノ」と大量生産したケースも数多く見られました。

近年、この社債の返済時期を迎える自治体が増え、合併後の人口減少や経済縮小により地方債残高が重い負担となっています。

他の面白かった話

1)市議会には「野党」「与党」などはない
市長は国会のように議員の中から選ばれるのではなく、直接選挙で選ばれているため「野党」「与党」は存在しません。
その代わり「会派」があります。

2)市町村合併による職員削減による問題
市町村が合併すると同じ部署で余剰人員が発生します。
民間企業では年齢の高いベテランから希望退職を募集しますが、多くの市町村では新規採用を抑制することで人員調整行いました。
地方公務員なので、リストラできない事からの苦肉の策ですね。
そのため合併時点では良かったのですが、現在になって若手不在による人材不足が重要な問題となっています。

3)市議会議員が議長になりたい理由
筆者の憶測による理由ですが、納得感のある理由でした。

すべて書くのは何なので、詳細については本書で確認してもらえればと思います。

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