三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が話題になっていたので読んでみました。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』について
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、フリーの文芸評論家として活躍している三宅香帆さんによる、現代人の「働くこと」と「読書」の関係について問う一冊です。
三宅さん自身、子供のころから学生時代まで「本の虫」だったのに、社会人になると気がついたらほとんど本を読んでない現実に気づき、その時の「なぜ本が読めなくなるのか?」という問いを出発点にして書かれています。
「週5日、朝9時半から夜8時過ぎまで働いていると、まともに本が読めない」
「時間があってもSNSや動画ばかり見てしまう」
そんな著者自身の経験をウェブ連載に書いたところ、多くの賛同を得たことで「これって私だけの問題じゃなかったんだ」と認識します。
内容は、明治時代から2010年代まで、時代ごとの読書に対する人々の向き合い方や時代の変化、その時代のトレンドなどについて説明してくれています。
ポイント
情報=知りたいこと 知識=ノイズ+知りたいこと
本から得られる「知識」には「ノイズ」(=他者や歴史、社会の文脈など)が含まれており、時代の変化と共に「ノイズ」を取り除いた「情報」だけを欲しがるようになったことが、本が読まれなくなった原因だと三宅さんは結論付けています。
最初に結論を求める「タイパ」「コスパ」が重視される現代では納得のいく結論ですが、この結論が本の最初ではなく最後の方(8章)に書かれている点が著者の反骨精神を見たような気がします(笑)
全身全霊で働く疲労社会
2000年代の「労働による自己実現」(仕事=アイデンティティ)を称賛する風潮や、2010年代の「仕事以外の文脈(読書など)を取り入れる余裕の無い働き方」などが、本が読めなくなるほど「全身全霊」で働く社会になってしまった原因だと述べています。
仕事をしていると本が読めない?
そんな社会に対し「本を読む余裕のない社会っておかしいでんじゃないですか?」という冒頭の問いかけに、思わず「そうそう」と同意してしまいました。
半身労働社会へ
「全身全霊で働く社会」(=本を読む余裕のない社会)から「半身で働く社会」への転換が、著者の活動テーマでこの本で一番主張したい主旨でもあります。
半身で働く例として「週3日勤務」「兼業」「ジェンダーフリー」などが挙げられています。
感想とまとめ
司馬遼太郎作品が多くのサラリーマンに支持されていた理由や、雑誌の「Big Tomorrow」が人気となった時代の背景など、読んでいて「なるほどな~」と納得する点も多かったです。
また、1950年から60年にかけて「サラリーマンエンタメ小説」の第一人者だった源氏鶏太さんの話が出た時などは、「父親の本棚にあったな~」と思いながら読んでました。
考えたことはなかったけれど、読んでいると「確かにこれらの書籍が人気となった根底には、そんな時代や文化の背景があったのかも」と感じさせられることが何度もあり、多くの気づきが得られる良書だと思います。


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